オレ流超人批評
第32回 ビッグ・ザ・武道
キン肉マン史上、最大のどんでん返しを成し遂げた完璧超人の首領。
彼の二面性に翻弄される読者が続出!
その衝撃のカミングアウトの原因を深く追求する!
What's ビッグ・ザ・武道
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| 「主客転倒」という言葉がありますが、まさにそれを地でいった超人が彼、ビッグ・ザ・武道です。彼が『夢の超人タッグ編』における黒幕・ネプチューンキングであったことは、これを読んでいる方は当然ご存知だとは思いますが、この「武道=ネプキン=黒幕」というどんでん返しを早くから予想できたという読者はおそらく皆無であったのではないかと思われます。それほど彼のネプキンへのカミングアウトは唐突、そして衝撃であり、多くの読者を混乱に陥れたというイメージがあります。なにせそこを起点として、完全にキャラが変わってしまっていますからね(笑)。今回は彼のカミングアウトがなぜこんなにも衝撃的だったのかを考察してみたいと思います。 超人師弟コンビの対戦相手として、あの妙ちくりんなフードを取り払って姿をあらわした彼は、その後派手なパフォーマンスでその個性を大きく開花させたネプチューンマンと比べると、一貫して地味な行動に終始してきました。この地味な行動のひとつひとつが、実は衝撃のカミングアウトのための布石だったというわけです。彼の地道な従者ぶりが読者の目を見事に欺き、「武道はネプチューンマンを引き立てるための脇役」「クロスボンバーを成立させるための人数合わせ」「まあつまりはデクの棒」というイメージを見事に演出したのです。 ではその見事な演出ぶりを検証してみましょう。まず彼の格闘スタイルですが、オリジナルの必殺技を複数持つネプチューンマンに比べ、彼は殴る、掴むといった、原始的な技がほとんどです。シリーズ後半に唯一「武道爆裂キック」という、自身の名がついた技を披露しますが、それ以外は「グオオオオ〜」とか「ウオオオオオ〜」という雄叫びを伴った、荒削りな攻撃しかしていません(笑)。この不器用さの演出は、かなり彼をノーマークにさせる威力を持っていたと考えられます。 また、本来弟子であるはずのネプチューンマンの命令を、キレることなく従順にこなしてきた精神力も特筆物です。おそらくこのタッグトーナメントに参加する前に、彼とネプとの間には綿密なミーティングがあったことでしょう。 「キ、キング、いくらなんでもそれは・・・できません」 みたいな(笑)。そして彼は見事に弟子の無礼に耐え忍んだわけです。さすがテームズ川で数10万年も辛抱強く出会いを待つだけのことはあります。元祖出会い系超人の面目躍如たるところでしょうか(笑)。この演出にも読者はコロリと騙されたわけです。 その他、彼はリング外で様々な雑用もこなしています。練習用のショベルカーを手配したり、カメハメとドクター・ボンベの墓場荒らしをしたりと、汚れ役も含めて自ら率先して行動しています。おそらく彼はショベルカーのレンタル代を、そこらの郵便局辺りからせっせと振り込んだことでしょう。また、夜中にスコップと懐中電灯を持って墓場で汗を流したに違いありません。こういったネプに対するかいがいしい行動の演出が、さらに「武道はマークしなくてよい」と読者に対して刷り込みをさせたと思われます。 こうやって「武道=ノーマーク超人」というイメージを地道に確立していった彼は、満を持して己のカミングアウトを行い、キン肉マン史上最大ともいえる大どんでん返しを成立させたわけです。これを成功させた要因は、イメージのギャップを最大限に活かしたことに尽きるでしょう。実はあまりに唐突にキャラ設定が変更したために、オレはジャンプを読んでいてとまどってしまった記憶があります。マスク狩り予告を遂行できず、うろたえるネプに喝を入れる武道にまず「????」と混乱。「見苦しい」「静まらんか」と、あのネプに対して発言する剣道男に違和感ありあり。武道の行動や言動が理解できず、めくったページを数ページほど戻して読み返してみても「・・・???」(笑)。とりあえずまたページをめくってやっと「そ、そういうことだったのか〜〜〜!?」と物語を理解できたほどです(遅いよ)。つまりそれは頭の切り替えにかなりの時間を要するほどに、刷り込まれていた武道のイメージを大きく、そして急激にブッ壊した展開であったわけで。そのことに当時中学生だったオレの頭はなかなかついていけなかったわけです。そう、あれは暑い暑い夏休みだったなあ。付録に『キン肉マンマスク狩りポスター』がついててさ・・・(遠い目)。 カミングアウトしたあとの彼は、もう完全に別の超人でした。ボロボロに崩れた剣道マスクを手に取り「さあ、キングよ、早くマスクをつけてください」と素敵すぎる無茶をいうネプチューンマン(笑)が突然敬語を使い出し、タッグのイニシアチブは完全にネプチューン・キングに移ります。強引なくらいの主客転倒がわずか1週で行われ、その後某カルト教団の教祖を先取りしたような風貌の彼は、今まで我慢してきた己を解放するかのごとく、悪辣ファイトを存分に振るい始め、堰を切ったかのごとくよく喋るようになるのです。その姿はまさに超人界のジキルとハイドといったところでした。 とまあいろいろごちゃごちゃと彼の衝撃カミングアウトの原因について考察してきましたが、ホントはね、もっと単純な原因が予想できるんだよね・・・。つーかゆで先生、「武道=ネプキン」って設定、唐突に思いついて実行したんでしょ?(笑)。 ※今回は八佐丸さん、胡乱さん、豚骨マンそルジャーさん、キン骨マングレートさんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。 (2007年3月11日) |