オレ流超人批評
第48回 アトランティス
謎の超大陸より現れた水棲超人
世間を震撼させた伝説シーンは
彼の性格がもたらした産物だった?
What's アトランティス
|
|
| 彼は『七人の悪魔超人編』にて、悪魔超人チームの一員として初登場しました。悪魔超人軍は4:3の割合でデザインがあらかた決まっている面子、流動的な面子と分かれるのですが(笑)、彼は前者の方です。つまりゆで先生がはじめから水棲超人として彼を起用しようという意志が感じられるキャラでした。 そのデザインは初期のオッサン臭い風貌(これが読者デザインのオリジナルに近いが…)のものから仮面ライダーアマゾン(笑)を経て、徐々に上記イラストのような安定感のあるものに変遷していきました。ま、これは実戦でデザインを試行錯誤させる中井先生のお家芸なんで、あまり気にしちゃいけません(笑)。 出身地は伝説の古代大陸アトランティス。現代をしのぐといわれる高度文明をもっていながらも、1万2000年前に一夜にして海に沈んだといわれる謎の超大陸です。しかし腰ミノ一丁というかなりラフなスタイルで活動する彼を見る限り、本当に超高度文明を持っていたのかなあと勘ぐらずにはいられません。これには『ティマイオス』『クリティアス』という自身の著書にこの大陸を記述した古代ギリシアの哲学者・プラトンもびっくりでしょう。「意外と原始的じゃん」みたいな(笑)。彼の出現によってアトランティスの謎は解明されるばかりか、より深まってしまいました。 性格やファイトスタイルは狡猾です。しかし彼の狡猾さというのはフェニックスのような性格の陰湿さからきているものではなく、あくまでイタズラの延長といった感じであり、ミートの足をエサにしたり、亡霊超人の手を借りたりとかなりひどい行動をしているにもかかわらず、どす黒い暗さをあまり感じさせません。狡猾さに明るいものと暗いものがあると分類するのも変ですが、彼の場合は明るい狡猾さなんですね。 おそらくそれは「オレを挑戦者に指名すれば家族を温泉旅行に招待するぜ」といった茶目っ気や、「さすがブラックホールはコミックスを全巻そろえているだけある」といったとぼけた発言や、「鉄仮面さんここまでおいで〜っ」といった子どものような挑発がある種独特な軽さを醸し出し、陰湿さを打ち消しているからではないでしょうか。そう考えるとかなり得な性格をしているキャラだといえますが、実はこの茶目っ気やイタズラ心というのが彼を形成する重要なファクターであり、その個性が大きく花開いたのがロビン戦での印象的なアップセットだったと思うんです。 当時のロビンマスクは誰もがその実力を認めていた超人だっただけに、彼の番狂わせともいえる勝利は衝撃的でした。しかもその勝利の演出方法が秀逸です。水中でKOしたロビンのマスクを剥ぎ取り、一度マスクだけを水中から露出。読者にロビンの勝利を期待させたところで、実は勝ったのは自分だとカミングアウト。この意地悪にもほどがあるフェイク、マスクからこぼれ出る不気味な緑の手、勝ち名乗りを受けるポーズは、『キン肉マン』史上においても屈指の名シーンを確立してしまいました。バイプレイヤーにされたロビンとロビンファンにとっちゃ悪夢でしたけどね(苦笑)。 これは彼の生来備わっている茶目っ気がこういった印象深い結末を演出したともいえるのではないでしょうか。あんな意地悪なフェイク、相当なイタズラ心がないと思いつきませんって(笑)。その結果彼は『キン肉マン』という作品において、稀代の演出家として名を残すことができたわけです。 そんな稀代の演出家である彼と、私は浅からぬ因縁があります。それは小学生時代の私にとっての、まさしく「アトランティスの謎」でした。といってもその謎は世間一般にいわれている「レーザーやオリハルコンをも扱っていた超高度文明大陸がなぜ一夜にして姿を消したのか」というものではなくて、「いったいどうやってあの実力者であるロビンマスクから勝利を得たのか」というものでした。 というのも、私はロビンVSアトランティス戦を見るまでに、えらい遠回りをさせられた思い出があるからなんです。正義超人軍VS悪魔超人軍の対抗戦における、当時の私のリアルタイム観戦ログを簡潔にまとめると
という感じになります。そうです、ロビン戦、ブロッケンJr.戦のみ欠落していたんです。誠に勝手ながら、「もう鈴木くんのバカーっ! なんでその前のジャンプもとっとかないんだよーっ!」って感じで怒りの矛先は鈴木くんに(笑)。ごめんね、鈴木くん。 でも試合は未観戦だけど、結果は知っていたんですよ。こういった表紙をジャンプで見たから。その中でもどうしても解せないのが
これだったんですよ。ロビンの実力は十分理解していたので、彼がこんな半魚人に負けたことが納得できないし、しかも「せこい勝ち」ってなんだよ、みたいな(笑)。あのロビンマスクがせこさに負けたのかと。せこさに負けるって、いったいどういう試合展開だよと悩んでいると、コミックス最新刊10巻が発売。ここでロビンVSアトランティス戦が始まるのですが、試合の結末までは載っておらず、ロビンが不忍池に飛び込むシーンで次巻に続くという引き。 もうもどかしい! 私の頭の中で「せこい勝ち」の謎は膨らむばかりです。しかしこの当時、ジャンプコミックスの発刊スパンは3〜4ヶ月だったんですね。真相を知るには待つしか方法がない私にとっては、もうそれが長くて長くて。「今月も11巻でないのかよ」と本屋で毎月確認ですよ(参考:10巻初版 1982年10月15日、11巻初版 1983年2月15日)。この悶々とした4ヶ月間、私にとっての「アトランティスの謎」はレーザーやオリハルコンといったハイテク文明ではなく、「せこい勝ち」の真相一点のみだったといえるでしょう。 そして4ヵ月後、やっと11巻を手にした私は彼のフェイクに見事にひっかかり衝撃を受けた口です(笑)。「せこい勝ち」ってのはミートの足に気をとられたロビンの背後を襲ったずるい勝利のことであり、ロビンが実力で負けたわけではないことを知って少々安堵しましたが、とにかく長い間、私に謎をもたらした超人であったことには違いがなく、とても印象深い超人の一人として私の記憶に刷り込まれたわけです。 …はっ。もしかしてこの「じらし戦法」も彼のイタズラ心から端を発した演出だったのでは? だとしたらなんて恐ろしい奴なのでしょう。もし『キン肉マン』の実写映画化が決まったとしたら、演出家は彼しかいないですね(笑)。 ※今回はマンモス最強さん、Windさん、夏さん、ゼニアさん、ふゆつきさんほか、たくさんの方からリクエストをいただきました。ありがとうございました。 (2011年10月30日) |